ふるさとの家で一番に思い出すのは囲炉裏のある風景でしょうか。
まだ小学生だった私は、体の弱かった母に代わり、
竈で飯を炊いたり、味噌汁を煮たりしたものです。
首に布を巻いて、背を丸めた母は、囲炉裏端に座り、
ああするのよ、こうするのよと教えてくれました。
そんな家が建ったのは、70年ほども前のこと。
父が病に倒れ、姉は病死、乳飲み子の私を抱えた母が、
一生懸命に建てた家です。
物置には、棟上式で掲げた弓矢、
設計図や大工の出欠簿を記した板切れまで残っていましたから、
家に寄せる母の思いは、よほど深かったことでしょう。
鹿児島を離れて所帯を持った私に、
「この家を大事にしてね」と言うのが口癖でした。
母が亡くなって20年。妻も賛成してくれて、
定年後はふるさとに帰ることになりました。
しかし、長年人が住まない家は、やや傾くほどの状態に。
壊した方がいいのでは、という声が多い中、出会ったのがタニザキさんでした。
梁や柱、欄間などは残しつつ、現在の暮らしに合わせ、間取りを大幅に改造。
白と黒のシンプルな色調にし、システムキッチンやバスも備えました。
そして、思い出の囲炉裏端は、日常使いではなく、
遊びの場として再現したのです。
母が語りかけるような囲炉裏端。
そこは、ある時は新たに覚えた趣味に没頭し、
ある時は遠来の友が集う、憩いの空間となりました。
ふるさとの地で、懐かしく新しい人生を歩き始めた私たち。
「お母さんにお返しができたかな」。
夫婦でそう語り合えるこの時間を、今幸せに思うのです。

タニザキの民家再生で得たもの
●古民家のよさを生かした家づくり
古い梁や柱はもちろん、土間にある竈や流し、囲炉裏を再生したり、欄間や書院棚の飾り戸を再利用、煙穴は換気口として利用するなどし、古民家のよさを最大限に生かしました。
●懐かしいものに囲まれる充足感
竹細工、貼り絵、そば打ち、陶芸などいろんな趣味を楽しむ場として、昔懐かしい囲炉裏端を再現。懐かしさの中で静かに過ごす時間は充足感に満ちています。また、庭には小屋も再生。昔の農機具や家財道具などもまとめておけるスペースが確保できました。
●現在のライフスタイルに合わせてリフォーム
玄関→客間、勝手口→玄関 南向きの日当たりのいい客間→リビングと、間取りは大きく変化。リビングには対面式システムキッチン、浴室にはシステムバスと、現在の暮らしの快適さも重視しました。
●地球環境&体に優しい家づくり
古材を使い、鉄筋などを使わない純木造建築で再生。現在そして将来ともにゴミを出さないよう配慮。漆喰を使い、塗料も植物性のものを使用するなどノンシックのものをチョイス。環境そして体にも優しい家作りが実現しました。
●田舎暮らしを懐かしむ友人が集う家に
「田舎暮らしを味わいたい」。昔ながらの囲炉裏や竈などを残したことで、昔懐かしい家の香りを楽しもうと、遠くに住む友人らもたびたび訪れ、にぎわいのある家となりました。

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