「これが、あの古びた小屋のようだった家かしら 」
再生の家に対面した日、私は目を疑いました。
家を守って欲しいとの父の気持ちに応えようと、
夫の定年を機に帰郷を決めた私たち。
でも、生まれや育ちは別の地で、
戻る場所にはこれといった思い入れはない、そんな家でした。
費用を抑え、二人が住めるようにと全面改築を検討。
そんな中で「残せるものはできるだけ残しましょうよ。
きっと住みよい、いい家ができます」と、
古い物を残す大切さについて愛情を込めて語る方に出会ったのです。
その熱い思いに引き込まれるように、全てを委ねた民家再生でした。
新しい家は、板張りで貧弱だった壁が漆喰となり、
重厚な面持ちに変わっていました。
天井が低くて暗かった部屋は、吹き抜けの明るいリビングに。
ロフトもでき、広さは四割ほど増して使い勝手がよくなりました。
それでいて家の中心には昔ながらの太い梁が横たわり、風情を醸し出しています。
窓を開けて風を入れた瞬間、お茶の香りが漂うような錯覚に陥りました。
そう、すっかり忘れていたけれど、昔、家の前には茶取り小屋があって、
おばあちゃんたちが茶揉みをしていたなぁ・・・。
そんな少女の頃のシーンが蘇り、懐かしさに包まれたのです。
それからの暮らしはまるで夢のよう。
夫は畑仕事に精を出し、私も地域での活動に楽しみを見い出しています。
「思い切り楽しみたい」と思っての帰郷でしたが、
後押ししてくれたのは紛れもなくこの家でした。
家が新たな友人を呼び、わたしたちにもこの家に相応しくなりたいとの張り合いが。
帰郷を決めたときから、思いがけなくもいい出会いが広がる日々。
もしかすると、ご先祖様が私たちを待っていてくれたのかもしれません。

タニザキの民家再生で得たもの
●エアコン要らずの光と風が通る明るい家
低い天井を取り払って上げ、壁部分に窓を入れました。明るさと風通しがぐんとよくなり、見違えるような家に。天井・壁・床とも断熱材を入れ、ペアガラスも使用。四季を通じてエアコンを使うことはほとんどなく、快適に暮らしています。
●ロフトのお陰でゆったりとした住まいに
吹き抜け空間を利用してロフトを2間作りました。ロフトとはいえ二階といえるほどの天井高。趣味を楽しんだり、帰省した子どもたちの寝室にしたりすることもでき、ゆったりと暮らせます。
●自然素材だけだからこその健やかさ
新建材は一切使用せず、壁は漆喰、床や壁、押入れの中なども自然木材だけを入れました。木の香りが漂い、気持ちがとても安らぎます。
●家が人を呼んでくれる喜び
帰郷にあたっては不安もいっぱいありました。ところが、この家のお陰でたくさんの人が訪ねてくれるように。ゆかりのない子どもたちまでもが「この家はとにかく落ち着くね。将来は帰ってきたいな」と気に入ってくれています。
●先祖の残した軌跡に出会える機会に
家屋の裏には祖父が昔豚小屋として使っていた小屋が残っています。壊してしまわなかったので、物置や、雨よけなどと今でもとても便利。母屋との調和も取れています。先日、祖父が育てた豚がこの地方の特産品となった豚の祖であることを知り、感無量でした。

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