その昔、枚聞神社の御神馬を預かっていたことから、今でも“御馬園さん”と
呼ばれるわが家。定年を迎えて私が継ぐことになった家は、
140年ほど前に建てられた古いもの。戦後帰郷した私たち家族が、
肩を寄せ合い新しい暮らしを始めた場所でした。
祖父母や叔父叔母も同居した大家族での賑やかな日々。
小学生の私も農作業を手伝ったものですし、祖母が蚕の糸を紡ぐ姿や、
茅葺屋根の下には囲炉裏があり、タバコの葉が下げられていた情景などは、
今思い出しても心が温かくなるよう。
私の中に古き良きものへの憧憬が刻まれているのです。
妻も同じで、古い道具類を愛し、それに手作りした小物などを合わせて
しつらえるのがとても好きなのです。
「古いミシンや糸車、着物を部屋に置こう」「石臼を庭に置いて水を張り、
植物を植えよう」・・・。
傷んだ家が再生できると分かった日から、私たちの夢は広がり始めました。
住む頃にはいい庭を眺めたいと、夫婦で庭木の手入れにも精を出したのです。
完成したのは、大きな梁が重みを醸し出し、新しい白木が明るさを運ぶ家。
一番明るい部屋はリビングにして箱囲炉裏を置き、
火のぬくもりを感じながら手を入れた枯山水の庭が眺められます。
親族が集えるよう、襖を取ると全ての部屋が広間として使えるようにもなりました。
今では時折訪れる孫が箱囲炉裏の回りを伝い歩きし、
友人は、緑に包まれた眺めが心を癒すと言ってくれます。
妻はといえば、私が作る畑から食べる分だけの
野菜を取ってきては日々の食事をこしらえ、
50人ほどの親戚が集う法事には、手作りの団子などを
用意しいそいそともてなしてくれるのです。
先祖代々を繋いできた家で、その古き良き存在と心に包まれながら
ゆったりと暮らす日々。
この時間を何より贅沢だと感じている私たちです。

タニザキの民家再生で得たもの
●囲炉裏があるやすらぎ空間
昔の家に覚えるやすらぎといえば、やはり囲炉裏。しかし新しくリビングとなったところは基礎の関係で囲炉裏を設けることができませんでした。そこで箱囲炉裏を置くことに。回りにテーブルが付いているうえに可動式で、使い勝手がいいですよ。
●個室と共用。兼用できる便利さ
基本的に昔ながらの田の字を生かした間取りで、襖で仕切れるようにしました。そのため普段は個室として利用しながらも、人が集まる際は大広間として利用できます。
●趣味の小物を飾れるコーナーの確保
生け花やパッチワークなど手作り品で家を飾ることが得意な妻なので、玄関ロビーや出窓など、ちょっとしたところに飾るためのコーナーを設けてもらいました。全体がシンプルなので、作品も生えるようです。
●普段は使わないスペースとして便利なロフト
天井の高さを生かし、屋根裏部屋を作りました。孫は隠れ家のようと大喜び。障子も取り付けて部屋のようになったので、普段は物置として使うほか、帰省した息子家族は、寝室としても利用します。
●ゆったりとした田舎暮らしを楽しむ
ゆったりとした時間が流れる田舎で、これまたゆったりとした間取りの家。夫婦それぞれに木工や手芸、料理など手作りの趣味を楽しんだり、野菜を作ったり。ふたりで散歩をしながら摘んできた野の花で家を飾るのも楽しみです。

|